芸能人が住んでる場所としてちょくちょく名前が上がる目黒、そこから出ている東急目黒線には高級住宅街の代名詞みたいな田園調布があったりするわけで、武蔵小山もそんな感じの、オシャレで気取った店が立ち並び小奇麗な格好の人々が闊歩する街なんじゃないかと気構えていたのだけれど。なんかぜんぜんそんなことなかった。
日曜の朝、道を歩いていても行き交うのはジョギングしているおじさんとか犬の散歩してるお姉さんくらい。大きな通りに出ても見かける店といったら、店先に古民具めいた精米機を置きっぱなしにしている古ぼけた米屋だったりと、山の手というより下町っぽい空気が流れていて、妙に居心地が良い……。
さて、なんで日曜の朝っぱらから武蔵小山に来ているのかというと、目黒のライフル協会が主催している「目黒の人じゃなくても参加OKな競技会」が、武蔵小山を最寄り駅とする目黒区立中央体育館にて開催されるからだ。
東急目黒線・武蔵小山駅から歩いてすぐのところにある目黒区立中央体育館。ここもなんか周囲の町並みと同じく妙にのんびりした雰囲気のある体育館だった。所持許可申請から半年待たされて、ようやくエアピストルの再所持ができたわけだが、8月はエアピストル射撃シーズンのちょうど谷間になってしまう時期で、日ラ主催、東ラ主催ともに参加できる大会が一つもない。だが、目黒区のライフル協会が、区主催のローカルマッチを日ラ公認（G4）に格上げして、他支部の人でも参加歓迎ということでアナウンスしていたので、それに参加させてもらうことにしたという次第。
区のローカルマッチがG4の大会として認定されるとか、珍しいことなのかよくあることなのか、今になって思い返せばせっかく直接訪ねて当事者の方々とお話できたのだから、詳しいことを聞けば良かったのだけれど、なにせ「4ヶ月ぶりのAPの試合」ってことで自分のことでいっぱいいっぱいになっていてそれどころじゃなかった。まだこの先何度も参加する機会はあると思うし、次回にはちょっとそこらへんについても聞いてみよう。
区立とか市立といった公営の体育館内に設置されたエアライフル射撃場というと、入り口が「隠し部屋」みたいに巧妙に隠蔽されているのが恒例だ。目黒体育館の射撃場は、メインホールに相当する場所に面したところに入り口はあるにはあるのだけれど、「正面入り口を入って、真っ直ぐ進まずに右後ろに振り返ると、そこにある」というもの。そこに入り口があることに気づくのがまず難しく、気づいたとしても扉に小さく書かれた「エアライフル射撃場」の文字に気づかなければ、これが射撃場の入り口だとは思いもよらないだろう。射撃場は6射座あるが、それほど広くはなく、射座の後ろも左右の幅もほとんど余裕がない。射座内に椅子を置くと、その椅子より前、あるいは後ろに行こうとするときに隣の射座に踏み出してしまうくらいの幅だ。最もターゲットは十分に明るく照らされているし、冷房も射座後ろにある大型の空調機械が唸りを上げて冷たい空気を供給してくれている（射座に立っている射手には風が直接当たらないように工夫されている）。
いざエアピストルを撃ってみると、銃声がやたらと大きく響く。耳が少し痛いくらいだ。エアピストル/エアライフル競技ではイヤマフや耳栓といった防音装具はルールで義務付けにはなっていない（装薬銃は装着義務あり）が、ここの射場をメインフィールドとして練習するなら、普段からちゃんとそういったものを着けていないと、若いうちから難聴になってしまうかもしれない。
※ちなみに奥戸射場は同じ銃を撃っても静かなものだ。壁の素材とか作りとかに違いがあるのだろうか。
さて肝心の結果だけれど、久々の長丁場ということもあってなかなかペースが掴めず、良いシリーズと悪いシリーズの差が10点近くあるという荒れた点数になってしまった。合計点数だけ見れば544と凡庸なものだけれど、荒れた2・3シリーズでまともな点が撃ててれば普通に4段点が出ていたのに……。
撃っていて、そりゃもうありとあらゆる邪念が頭の中で渦巻き続けていて大変だった。悪い点数撃っちゃった後には、「この先はもう点数のことは考えずに新しい撃ち方を試す練習の場にしてしまおう」みたいな考えが頭をよぎるようになったりして。この考えって、「もう頑張っても無理だから諦めよう」とする自分に対する言い訳として良く出てくる、「悪魔の囁き」みたいなヤツだ。囁きどおりに「練習の場」にしたとしても、大した成果は得られない。どんなに絶望的な悪い点数を撃ってしまったとしても、最後まで諦めずにちゃんと撃ちきろうとすること、その方がずっと「先につながる射撃」になる。