静岡県のツインメッセで毎年5月に開催されている「静岡ホビーショー」。東京マルイからの新製品情報が、どこよりも早く一番最初に発表される場所として、多くのユーザーやメディアの注目を集めるイベントだ。
この記事を書いている時点では、まだ「今日」になる5月14日~17日にかけて、静岡ツインメッセにて毎年恒例の「静岡ホビーショー」が開催されている。今回で54回になる。エアガン業界からは、東京マルイとクラウンモデルが出展している。
東京マルイは、新製品の情報を一番最初に発表する場としてこのホビーショーを位置づけている。ホビーショー開幕前は、たとえどれだけ東京マルイと付き合いが長いメディアやショップ関係者であっても、絶対に新製品の情報は教えてくれない。「ここだけの話」とかそういうのでちょろっと漏らしてくれるようなことすらなく、本当に完全に秘密なのだ。
事前に公式サイトにテイザー情報としてチラ見せだけはされるのだが、今回はチラ見せされているいくつかの製品の他に、「度肝を抜く新製品が登場!」と、そりゃもう大風呂敷拡げまくりの超ハードル高い煽り文句が付いていた。撃つと「どっかん」と発砲音がヘッドホンから聞こえてくる「新次元」だとか、どう見てもチャチな作りにしか見えないのにやたらと値段だけ高い姫路城の模型だとか、いまさらこの分野に参入して勝ち目があるんだろうかと他人事ながら不安になった電動スクーターだとか、いろいろと過去にユーザーの予想を悪い意味で裏切った新製品を発表した前科のある東京マルイだけに、今回もその手の「度肝抜かれ」なんじゃないかと心配するユーザーも多かったのが本当のところ。
だが今回に限っては、ユーザーの予想は良い方向に裏切られた。良い意味で度肝を抜かれたその新製品は、電動フルオートショットガン「AA-12」だったのだ。
超ドヤ顔で、電動フルオートショットガン「AA-12」を紹介している東京マルイ広報の島村さん。これまでM4やらHK417やらを紹介するときは現用アメリカ軍装備のレプリカで全身コーディネイトしていたが、今回はオリジナルのAA-12 & M4MWSがデザインされたTシャツというカジュアルな格好だ。こう言っちゃ悪いけれど現用米軍装備はあまり似合ってなかっただけに、こういう格好の方が生き生きして見える。
実銃からして、「なんの冗談だ」と思ってしまうスペックと形をしたAA-12。大きなショットシェルを強引にフルオートでガシガシと連射するというのも冗談じみていれば、まるでベニヤ板を銃の形に切り抜いただけなんじゃないかってくらいに味も素っ気もない形状も冗談じみている。とはいえ、実際に形になったものを目にしてみると、意外に細かい部分は「銃」っぽいディテールが集まっていることが分かる。
ゲームの実銃紹介系の本では「ショットガン」のコーナーでメインを張ることが多いAA-12。とはいえ民間用として販売されているものではなく、実際に撃ったことはおろか手にしたこともないので、そういう本のライターとして仕事をするときには、紹介文を簡潔にわかりやすく(つまり専門用語の使用が禁止された状態で)短くまとめて書け、なんて無理難題を脂汗流しながら何度もクリアした思い出がよみがえる。
そういう妙な仕事をしているわけじゃないガン好きの方々にとっては、この銃はFPS系のゲームで反則的なスペックを発揮する必殺武器としての印象が強いようだ。まあ、一般的なアサルトライフルやサブマシンガンとくらべて、単位時間あたりの発射可能弾数も、ドラムマガジンを使えば装弾数も、頭ひとつ飛び抜けているわけで、実銃みたいに入手するための手段だとかコストだとかをあまり考えずにスペックだけ比べて使う銃を決められるゲームの世界なら、そりゃ人気を集めるのも分かる気がする。
スケルトンモデルが展示されていた。通常の電動ガンよりはるかに前後長が長い特殊なメカボックスが、マガジン後端からほとんどバットプレート近くまでの大きなスペースを埋め尽くしているのが分かる。
メカボックス後端に、横向きにモーターが配置されている(少しFA-MASのメカボックスの配置に似ている)。このモーター、AA-12のために開発された全く新規のモーターになるのだそうだ。
一度に発射される弾は3発。バレルもそれに合わせて3本。ここまではわかるが、なんとシリンダーも1本のバレルに1つ、合計で3つのシリンダーが使われるのだとか。上1本、下2本の三角形に配置されていて、横から見えるのはおそらく下2本あるシリンダーのうちの1本だろう。
HOPの調整も、3本のバレルに対してそれぞれ独立して行うことができる。これはびっくり。ちょっとやり過ぎなんじゃないか、一般のお客さん付いてこれなくなってるんじゃないかというギミック満載っぷりだ。マルイの本気度が伺える。
フルオートで3発ずつを撃つという特性上、あっという間に弾が無くなる。そのサイクルは、ハイサイクル電動ガンを軽く凌駕する秒間30発。付属する箱型マガジンには90発の弾が入るが、それが3秒で無くなってしまうということになる。さて、AA-12といえばドラムマガジンだが、これは別売りで電動給弾式のものが販売される予定とのこと。その装弾数は、これまた驚きの3000発「以上」! あなたその銃で私に何をするつもりなの……と泣き言を言いたくなってくる勢いだ。この中間を埋める形になるゼンマイ巻き上げ式の装弾数数百発程度のマガジンもほしいところだが、今のところはまだ予定にはないとのことだ。
驚きの新製品、電動フルオートショットガンAA-12。その細かいディテールを見ていこう。
リアサイト。まっ平らなレシーバートップから唐突にニョキッと生えているという印象が強いリアサイトだが、金属製でかなりしっかりした作りだ。リアサイトでは左右の調整だけができる。
フロントサイトも金属製。上下の調整はこちらで行う。実はこのAA-12、見た目、というか外装の多くはプラスチック製だが、中身はマズルからバットプレート近くまでガッチリと金属製パーツで固められており、剛性はかなりのものだ。手に持って全力疾走している状態で思いっきりすっ転んだとしても、そう簡単に真っ二つに折れたりはしないだろう。
レシーバートップにあるチャージングハンドル。今回展示されているモデルには光学サイトなどを取り付けるためのレールマウントの類は全く取り付けられていなかった。もっとも実銃にはレール付きのバリエーションもあるので、バリエーション展開あるいは別売りパーツなどで対応していければ、みたいな話をされていた。
チャージングハンドルを引くとエジェクションポートカバーが開いて、HOP調整用ダイヤルが3つ顔を出す。手を離してもハンドルは戻らず、手動で前に押して戻す必要があるが、これは実銃もそうなっているのだとのこと。
実銃のAA-12はフルオートのみだが、東京マルイはゲームなどでの使い勝手を考えてセミオートのモードも追加している。セレクターを「F」にするとフルオート、「S」にするとセフティ(撃てない)だが、その中間位置にセレクターが止まる位置があり(写真右)、そこがセミオート・ポジションとなっている。
AA-12のノズル部分に新しく使われた「カシマコート」という潤滑処理がアピールされていた。アルミ表面に強固な酸化皮膜を作って製品を保護する「アルマイト」はメジャーな表面処理だが、その酸化皮膜には細かい穴(細孔)が無数に開いているので、その穴に二硫化モリブデン(強い負荷がかかる金属同士の潤滑に使われる潤滑剤)を充填することで、特にグリスをささなくても長い期間潤滑を維持することを可能にしたものだという。
マルイブース入り口にて、ご来場の皆様にエアガンの魅力をアピールしてくれている綺麗な女性モデルさん達……なのだが、今日は業者日ということもあって参加者はみんな女性より新製品を見せろと脇目もふらずにブースの奥に進んでしまう人ばかり。私もそうだけど。そんなわけで今日はちょっと暇そうにしてるところを見ることが多かったが、きっと一般公開の土日は写真撮影で大忙しになることでしょう!
さて、取り急ぎ「度肝を抜く新製品」であるAA-12の紹介だけを行ったが、もちろんこれ以外にも新製品の発表はあったし、他のメーカーブースにも面白そうなものはたくさんあった。次回以降はそれらを紹介していく予定。