通常ラインに比べて価格は高くなっても十分にそれだけの価値があると信頼されているノーベルアームズの「SURE HIT」シリーズ。そのシリーズ名を冠して新発売となるM4sは、ネタ元になっているエイムポイント製品に見た目が似てるだけじゃなく、かなりガチに本格派のドットサイトとして作り込まれたものだ。
先日、レビュー記事を掲載したビッグマイナーチェンジ版のTAC-ONEスコープに続き、今回はドットサイト、それもエイムポイント製品の形を「モチーフにした」タイプの新製品。しかし従来のノーベルアームズ製品と異なり、この新製品は「SURE HIT」ブランドとして発売される。
※今回の製品レビューに使った製品は量産試作品です。市販品とは細部や仕様に変更がある可能性があります。
スペック
倍率:1倍
レンズ径:30mm
全長:126mm
重量:374g
使用電池:単3電池×1個
ドットサイズ:3M.O.A.
パララックスフリー:100ヤード(91m)
調整幅:60M.O.A.以上
1クリックの調整幅:1/2M.O.A.
耐衝撃:800G
防水:5m/30分
撥水:レンズはロータスコーティング済
価格:25,000円(税抜)
SURE HIT M4sの最大の特徴、それは「レンズを被弾から守る強化ガラス製のガードが付属する」ことだろう。対物レンズの前方にキュキュッとネジ込んで装着する。もちろんキルフラッシュも付属するのでどちらか片一方、あるいは両方を装着することもできる。ポリカ製のプロテクターを手作業で切り出して販売して糊口をしのいでいた身としては大打撃の新製品である(笑)。
付属する、強化ガラス製のレンズガード(左)とキルフラッシュ(右)。両方ともレンズを被弾から守ってくれるという効果は同じだが、レンズガードは視界が暗くならない、キルフラッシュは前から見た時のレンズ反射を防ぐという、もう片方にはない利点を持っている。
キルフラッシュとレンズガードはどちらか片一方、あるいは両方を取り付けることができる。一番上が何もなし、2つめがレンズガードのみ、3つめがキルフラッシュのみ、一番下がレンズガード+キルフラッシュの両方を取り付けたところ。レンズガードはキルフラッシュの「後ろ側」にのみ取り付け可で、キルフラッシュの前方をさらにガードするという使い方はできない。
レンズガードの登場でキルフラッシュがお役御免とはならない理由がこれ。ダットサイトは対物レンズに後方から照射した光を反射させて射手に見せるものなので、対物レンズに反射しやすいコーティングがされているため、前から見た時に目立ってしまう。キルフラッシュはそれを防ぐ役割もある。
M4sの特徴、言い換えると「アピールポイント(ウリ文句)」は他にもたくさんある。一つは対物/接眼レンズの両方に、「ロータスコーティング」という撥水・防汚処理がされていること。……ただこれは、借り物に実際に水をぶっかけて試すわけにもいかないのでテストは未実施だ。
他には、着脱可能なスペーサーが付属していること、手に入りやすい単3電池を使用すること、ドットの明るさを肉眼ではほぼ確認不可能なナイトビジョンモードまで暗くすることが可能なことなど、ネタ元になっているエイムポイントM4sの特徴は基本的にそのまま継承しているといっていい。
裏から見たところ。ノーベルアームズのメーカーロゴは、少なくても目立つ形ではここにしか入っていない。下にある2本のネジを外すとマウントとスペーサーを外すことができて、短いネジに付け替えてスペーサーを外したローマウント仕様にすることもできる。
製品名が、電池ケースの下面に「物凄く目立たない形」でうっすらと入っている。これも、実は「ネタ元のエイムポイントM4s」の特徴をそのまま継承したものだ。
電池ケースの蓋と本体の間には真鍮製のリングが見える。特にこれがあるから特別になにかスペックアップするというものでもないらしいのだけれど、本体が黒一色なだけにこのリングは外見上の特徴になっていて、「ゴールドリング」なんて名前で(ノーベルアームズの中の人に)呼ばれていたりするらしい。
蓋を開けて電池を入れるところ。電池の向きは、電池ケースの側面にイラストで描かれている(写真で赤矢印で示したところ)。
銃に取り付けるためのロッキングナット。エイムポイント製のM4では、このネジには「ある程度以上に強く締め付けると少しだけ空回りする」という機能があり、ナット自体がトルク管理をする仕様になっていたが、さすがにそこまでは再現されていない。
ロッキングナットの側面には貫通穴が開いていて、いかにもここに(六角レンチなどの)棒を差し込んで回すと強く締め付けたり緩めたりできそうな雰囲気なのだが……
締め付けていくと内部のネジが穴の中にせり上がってきてしまい、棒に引っかかる(無理して回せば棒として使っていたレンチを破損してしまう)という問題があり、上写真のような使い方はできなかった。
※量産試作のみの問題で、もしかしたら市販品では改良されている可能性もあります。
ドットの上下左右を調節するアジャストスクリュウには蓋がされていて、その蓋(キャップ)は本体と一体となった頑丈なガードで4方向(左右調整キャップは2方向)がガッチリとガードされている。
ゼロイン(ドットの位置の上下左右調整)をするときには、まずキャップを外す。すると上下左右の調節をするためのアジャストスクリュウが顔を出す。
さて、これは外したキャップである。表面になにやらモールドがあるのだが、実はこのモールド、単なる飾りではなく意味があるデザインなのだ。
キャップを裏返しにすると、上下左右のアジャストスクリュウを回すためのツールとして使えるのだ。
もちろんサイズはピッタリ、手が滑って傷を付けてしまったりする心配もない。これはアイデアである。
では、実際にドットを点灯して覗いてみたところの写真だ。こちらも前回のTAC-ONEと同様、撮影してすぐ返却というハードスケジュールだったために実際のフィールドに持ち出しての撮影ができず、黒い紙に向けて照準してるだけの写真になってしまうことを勘弁してほしい。
ダイヤルの目盛りは「N1 N2 3 4 5……」という具合になっているが、N1とN2はナイトビジョンモード、肉眼では点灯しているところを見ることはできない。この「3」が肉眼で使う上での最も暗いモードだが、これもかなり暗く、実質的にはこの「3」までがナイトビジョンモードと考えたほうがいいかも……。
これが「4」。ほぼ中心(ちょっと右上)に、針で突いたみたいな超小さい赤いドットが点灯している。※画像クリックすると拡大されるので、見えない場合はそちらで確認してください。
これが「5」。
これが「6」。ドットの位置が動いているけれども、明るさ調節ダイヤルを動かす際にドットサイトを少し動かしてしまったため。
「7」。「4~11」が実質的な実用範囲だとすると、「7~8」はちょうどその真ん中当たりの明るさに相当する。
「8」。普通のドットサイトは、明るくしていくとレンズ内で乱反射したりドットが滲んだりするものだ。この製品がどうなのか、写真を見て判断して欲しい。
「9」。調節ダイヤルを回す時に手が滑ってサイトを大きく動かしてしまい、レンズの端っこギリギリにドットが写っている状態になってしまったが、これでもドットの形はまったく歪まず、レンズや鏡銅内の乱反射も全く見られない。
「10」。最大の明るさの一つ手前になる。
最大の「11」。ここまで明るさを上げてようやく乱反射らしきものがちらほらと写真に写るようになった……けれど、実際に肉眼でみてもこんな反射は見えなかったりする。おそらくカメラのレンズに明るい光が入ったことによってこんな現象が起きるんじゃないかと思われる。
いわゆるM4s「タイプ」の製品としては、けっこうお値段が高めになってしまっているSURE HIT M4s。レプリカ品の光学サイトといったら、基本的には「銃に付ける飾り」に近い扱いしかされていなかった一昔前だったら、もしかしたら見向きもされない製品になっていたかもしれない。「それだけ金出すなら、もう○万円足して本物買うよ」といった具合に。
しかし今は違う。タクトレ(タクティカルトレーニング)がエアガンの使用方法の一つとして大きなジャンルになりつつあり、サバイバルゲームでも「素早く正確に動いて、素早く正確に撃つ」という技術を磨くことによって生み出される面白さが少しずつ理解されていき、その影響でエアガンだけでなく照準器にも、「ちゃんとした照準器としての性能」が求められるようになってきている。
となれば、スタイルは実際に米軍などで広く使われているエイムポイント製品に近く、それと同時に照準器としての性能や耐久性も実物に匹敵するレベルで十分に高く、それでいて価格は遥かにお求めやすいところに落ち着いている……というこの製品は、今ならば十分にユーザーに受け入れられるだけの素地が完成しているのではないだろうか。
良いギアやツールはユーザーを育てる。これは紛れもない事実だ。その一方で、レベルアップしたユーザーが増えることは、より優れたギアやツールの登場へと繋がる(メーカーが、そういう製品を作っても十分なニーズがあると判断する根拠になる)ということもある。最近の、サバイバルゲームやシューティング関連でのエアガンや用品類の動向を見ているとそんなことを思う。きっとそれが、文化が成熟していくということなのかもしれない。
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