新ルールに適合させるためグリップを切ったら警察に怒られた話

先日投稿した、この記事の続きというか後日談というか顛末というか、そういうお話です。

グリップを切らなきゃならなくなったのは誰のせい?【海外の反応】

2026年の初頭、ISSFのルールに大きな変更がありました。特にピストルについては、市販されているエアピストルの多くがそのままだとルールに適合しなくなるため、一部を切断するなど不可逆的な加工を行わなければならないという、相当に「ひどい」ものでした。

ノコギリとかジグゾーとか万力とか、木材加工をするための道具を持ってる人ばかりじゃありませんから、正確な寸法や角度を(ルールに適合するように)合わせてグリップを切ったり、もしくは新ルールに適合できるような新しいグリップを入手できたりする人ばかりじゃありません。

日本においては、ライフル協会が「当面の間は、世界戦への派遣選手選考会などの一部の大会を除き、新ルールを厳格に適用することはしない」と発表してますので、全てのピストル射手が大慌てでグリップを加工しなきゃならないってわけじゃないのですが、それでもずっとそのままってわけにはいきません。いずれ、「今のままのグリップではルール違反になる」という時代が来るはずです。

なので私は自分のモリーニのグリップをルールに適合するように加工したわけですが、その件について念のため加工後に所轄の警察に「こういうルール変更があったので、こういう加工をしました」と報告をしたところ、けっこう予想外な展開を見せました。最終的には何も問題なかったってことに落ち着いたのですが、いろいろあったのでその顛末をお送りします。

「これは違法改造の疑いがある」

エアピストルは日本だと実銃ってことになってますから、警察(公安委員会)の許可を得ることで特別に所持しているものになります。許可に当たっては、銃の全長・銃身長・口径(使用する弾)・装弾数・装填方式など、実際に細かく計測した上で、その数値が許可証に記載されます。勝手に改造したりしちゃいけませんよってことです。

グリップをISSF新ルールに適合させるための加工は、許可証記載の内容には全く影響しません(※)。そもそもグリップを切ったり削ったり盛ったりなんてのは、ピストル射手だったら日常的にやってることなので、それが駄目とか言われるなんて思いもしていませんでした。

※ヒールレスト延長については一見すると全長が伸びているので許可証記載事項の変更に見えますが、許可証に記載される「全長」は、「通常の使用において動かすことが多い部品は除いて計測する」というルールがあり(ライフルの可動式バットプレートなどに対応するため)、ヒールレストは可動するパーツなので最初から計測の対象にはならないので、この点では問題になりません。

春の銃器検査の前に、念のため警察の担当者に「ルールが変更になって、グリップをこういうふうに加工した」と写真を見せたところ、担当者の顔色が変わり「これ、勝手に自分で加工しちゃったんですか!?」と突然の詰問調になりました。「これは改造行為に当たる。銃器製造許可など特別な資格を持った者でない人間が行なうと、違法改造になる」とまあ、怖い言葉が連呼されました。

そんなはずは、これは国際ルールの変更に合わせたもので、日本中のエアピストル所持者がほぼ同様の加工をすることを余儀なくされている。全員が銃砲店に加工を頼むなんてことになったらパニックになる、実際に自分で加工している人はやまほどいるはずだ――と話をしたのですが全く取り合ってくれません。

担当者の方は、「ちょっと待っててください」と言って事務部屋に戻ります。私は取調室に放置です。おそらく、警察庁(本社)に電話をかけて指示を仰いでいたのだと思います。そのまま1時間くらい待たされたでしょうか、ようやく戻ってきた担当者は「やはり、その改造は違法のおそれがあるとのことです」と、先程とかわらない主張を繰り返しました。

銃砲店は「そんなはずはない」と言う

帰宅後、銃砲店に電話をして、「警察でこんなこと言われたのだけれど」と相談してみました。もしかしたら、既に切断されたグリップに対して「これは(資格を持った)銃砲店が行ったものだ」という書類とか書いてくれたりしないかなという一縷の望みを持ってのものだったのですが、「いや~さすがに、当方で加工したわけではないものに対して、当方が加工したものだという書類を書くというわけには……」という回答でした。まあ、そりゃそうだ。

その上で、「その警察の担当者の言い分はおかしい。許可証記載事項が一切変わらない加工なのだから、そもそも加工したという書類を出せといわれても何も数値が変わってない以上、書類に書けることなんかなにもない。もう一度、ちゃんと確認してみてはどうだろうか」というアドバイスをいただけましたが……。本社に確認までした上で「それは違法改造だ」って言われてるわけですから、もうこれ以上どこになにを確認すれば良いのやら。

銃器検査において銃は没収される

解決策が見つからないまま、春の銃器検査(春といっても初夏に入りかけでしたが)の日が近づいてきました。ヒールレストの追加部分については、「可動部分は除いて計測」の原則を知らない人が担当になるとモメるだろうと思い、ヒールレストは外した状態で持っていきましたが……。

やはり担当者の方が出てきて、「先日申し上げたとおり、これは違法改造の疑いがあるので、一旦お預かりして構いませんか」という話になりました。構いませんかって言われてもねえ。「それ、嫌ですとは言えないヤツですよね」って言ってみたんですが、「そうなると逮捕するとかそういう話になってしまいます」って回答でした。実質的に強制ですよね。分かってますけど。

というわけで、仮領置の書類を書いて(6ヶ月過ぎたら自動的に所有権は国に帰属することに同意する、みたいなことが書かれたヤツです。もう3回めなんでなんかもう見慣れてきた感じです)、ピストルはお取り上げということになりました。

翌日に戻ってきはしましたが

春から夏にかけて開催される大会は多く、練習もしておきたいのに銃がないというのは困るなあと思ってましたが、翌日に警察から電話がありました。とりあえずお返ししますとのことです。

なぜ駄目と見なされたのか、なぜOKになったのかという理由については説明されませんでしが、「これからこういうことする時は事前に必ず連絡してください。自分で勝手に加工したりしないでください」と、何度も念押しされた上で銃は返却されました。

といっても「こういうこと」というのはどこまでを含むのでしょう。最初の方に書きましたが、ピストル射手にとってグリップを切ったり削ったり盛ったりと「外観を変更する加工」をすることは日常的に行っていることです。それをするたびにいちいち所轄に電話するだとか、銃砲店に持ち込んで加工してもらうだとか、そんなのは完全に非現実的な話です。

日ラの人に話したところ

とはいえ、戻ってきたんだからもういいか――ということで、再び練習の日々に戻ったわけですが。その後しばらく経って、日ラ主催のビーム射撃教室に指導者として参加した際、休憩時間の雑談で「そういや皆さん、新ルールに対応させるためのグリップ加工ってどうしてます?」って話になって、上記の経緯を話したところ、日ラの人がそこそこ深刻な表情で話しかけてきました。

「池上さん、それけっこうな大問題ですから、日ラ競技委員まで詳しい経緯を送ってくれませんか?」

日ラ競技委員の連絡先とか分かるかなあ、今の日ラのWebサイトって「問い合わせ」をクリックしても「直接の問い合わせは受け付けていない。聞きたいことや言いたいことがあれば所属している各支部を通して連絡しろ」ってことでメールアドレスはおろか問い合わせフォームすら存在してないんだけれど――。

と思って家に帰ってPCのメールソフト開いて検索したら、以前に何かでやり取りした時のログが残っていて、そこに競技委員のメールアドレスが残っていました。ラッキー。

ということで経緯を詳しく時系列に沿って書いて送りました。

日ラの対応は素早かった

メールを送った数日後に長瀞で開催された全国ピストルにて。埼玉県ラの田中さん(日ラの推薦委員長でもあります)から呼び止められました。

「池上さん池上さん、グリップの件だけど」

会員からの情報(私の送ったメール)を元に警察庁といろいろ話し合いがあったそうです。それこそ「そんな訳の分からんこと言ってる所轄はどこだ!」みたいな怒りのクレームを叩きつけたいところだったとのことですが、喧嘩腰になっても誰もトクしません。そもそも警察側は「国際ルールに変更があって、許可済みの何百丁にも及ぶ銃に大きな加工をしなければならなくなった」なんてことは全く把握していないので、まずそこから説明するところからスタートなんで、なかなかに苦労はあったようです。

加工といっても、許可証記載事項は一切変更がありません。なので(警察側が)文句をつけるとしたら、「同一性の保持」において違反があったという理由によるものになります。散弾銃とかを独立銃把(正確な呼称ではありませんが、いわゆるピストルグリップのこと)のストックに交換したりすると怒られるってのと同じようなヤツですね。解釈の幅はどうにでも広げられるので、それを言い出されるともう何も言えなくなります。

といっても、エアピストルの所持は「国際大会などの候補選手として努力精進する」という大前提で特別に許可されているものです。それなのに、その国際大会に参加するために必要となる加工を「それは違反だ」といって取り締まることは正しいことと言えるのかどうか?

とまあ(おそらくは)丁々発止なやり取りの末、「できれば加工前、加工してしまった人は事後でもいいから、警察の担当者に『新ルールに対応させるための加工を行った』ということを報告してほしい。もしそれで違反だとか言われるようなら日ラに連絡してくれ」という告知を、日ラの公式サイトに掲載することになったのことです。

ISSF新ルール適合のためのグリップ加工について

「警察庁からの通達とか出してもらうわけにはいかなかったんですか?」って聞いてみましたが、それは難しかったとのこと。まあ、なんとかここらへんが落としどころだったんでしょう。

グリップ加工して警察に怒られた話、その後にさらにいろいろあった話でした。

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